<吉祥寺残日録>集団免疫って? #200321

三連休中日の土曜日。

午前中、街に買い物に出たのだが、すごい人出だった。

吉祥寺駅ビルのアトレは人でごった返し、デザートコーナーには女性客の行列ができていた。

ウィルスが怖いと言っても、ずっと家に閉じこもっていては気が滅入る。

暖かな春の日差しに誘われて多くの人が街にあふれ出してきたのだろう。

外出禁止令が出されている欧米の大都市に比べて、日本ののどかさが心配になってくる。

この三連休、大阪と兵庫では往来自粛の要請が出されたが、今朝の読売テレビ「ウェークアップ」に出演した大阪府の吉村知事は、厚労省から非公開で示された文書を自らの判断で公開していた。

その文書には、「見えないクラスター(集団感染)連鎖が増加しつつあり、感染の急激な増加が既に始まっている」と書かれていたのだ。

吉村知事が会見で明かした「28日から4月3日までの間に、両府県の患者数が3374人、うち重篤者は227人に達する」という試算もこの文書にはっきりと書かれていた。

厚労省は、自治体の長にはこうした数字を示してベッド数の確保を求める一方で、国民に対しては危機感を煽るようなこうした数字を発表しようとはしない。

感染経路がわからないという意味では、関西圏以上に首都圏が心配だが、政府も東京都もそうした数字を示そうとしない。

東京でも密かに感染が広がっているのだろうが、「不都合の真実」が告げられないために、コロナ疲れの市民たちがこうして街に溢れるのもやむを得ないだろう。

でも、こんなんで本当に感染爆発は防げるのだろうか?

新型コロナウィルスが中国で顕在化した当初から、私は日本政府の対応に異を唱えてきた。

今でも強い違和感を覚えている。

しかし、私は最近、極めて重要なポイントを見落としていたことに気づいた。

人類が誰も抗体を持っていない未知の新型コロナウィルスの流行は、どんなにあがいても社会の6−7割が「集団免疫」を獲得するまで終わらないという感染症の世界での常識である。

最も重要なキーワードは「集団免疫」なのだ。

昨日の夜のTBS「ニュース23」に出演した国際医療福祉大学の和田教授は、「集団免疫ができるまで感染は終息しない」と明確に話していて、私の認識が変わるきっかけとなった。

そして今日もたまたま、NHKのBS1スペシャル「ウィルス VS 人類」という番組の再放送を途中から見たのだが、専門家会議のメンバーである東北大学の押谷教授も集団免疫のことをはっきりと語っていた。

押谷教授は地上波の番組に出演した際、PCR検査に否定的な発言を繰り返し個人的には安倍政権の太鼓持ちという印象を持っていたのだが、この番組を見て押谷さんが本当に伝えようとしていたのは、このウィルスはどんなことをしても止められないという恐ろしい事実だったことと初めて理解した。

新型コロナウィルスは、どんなことをしても地球上から絶対に消え去らない。インフルエンザと同じように、人類はこのウィルスと共存していくしか選択肢はないということだ。

つまり、私たちが考えているより、このウィルスはもっともっと厄介なのだ。

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ニューヨークでもついに、全労働者に出勤禁止の措置が発表された。

しかし、欧米各国が相次いで国境を封鎖したり、市民に外出禁止を強いたりしても、所詮は一時的にウィルスの感染速度を落とすことしかできないらしい。

さらに今後、アジアやアフリカの発展途上国で想像を絶するような感染爆発が起こると予測されている。

ジャカルタでは非常事態、タイでは商業施設の閉鎖、インドでも全土外出禁止の措置が取られるという。

新型コロナに対する最も有効な対策は手を洗うことだが、アフリカを中心として、世界には自宅で手を洗う水が得られない人が実に40%もいるというデータもあるのだ。

その時、人類は過去に直面したことがないような苦難に直面すると多くの専門家たちが考えている。

今我々にできることは、ウィルスを撲滅することではなく、医療崩壊を防ぎ、少しでも多くの命を救うことしかないのだ。

そういえば、連日テレビで拝見している元国立感染研の岡田晴恵さんも、表現は違えども同じような話をずっとされていた気がする。

私の理解力が追いついていなかっただけだ。

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私は、日本も中国から学ぶべきだと考えていた。中国はその独特のIT監視システムをフル活用して、ウィルスの押さえ込みに成功したと思っていたのだが、どうもそう簡単な話ではないらしい。

「ニュース23」で和田教授は、中国でも第二波、第三波の流行が起きると語った。

武漢以外の町では今もほとんどの人たちが免疫を持っていないので、中国のどこかでいずれまた感染拡大が始まると考えるべきだということだろう。習近平政権が海外からの再流入に異常に神経をとがらせているのも、専門家の見方を裏付けている。

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私は、日本政府が経済や東京五輪を慮ってPCR検査を意図的にせず、国民を危険にさらしているとずっと考えてきた。

安倍さんはそうかもしれないが、専門家たちはもっと深刻に考えているようだ。

各所に配慮する専門家会議に公式見解ではなく、押谷教授や尾身副座長などが本音を語っている番組を見ると、みんなこの新型ウィルスを根絶する方法はないというのが基本的な認識だということがわかる。

WHOが当初から国境封鎖は無意味だと言っていたのは、単に中国に気を使っての発言ではなく、どうやら感染症の専門家の間では共通認識だったらしい。

安倍総理の口からそうした科学的な言葉は聞かれないが、先日メルケル首相が「国民の7割が感染する」と発言したのも、「集団免疫を獲得するまで流行は止まらない」という専門家の認識を国民に伝えたに過ぎないということがわかった。

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イギリスのジョンソン首相はメルケルさん以上に率直な言葉を使った。

「症例数は急激に上昇するだろうし,実際のところ現在の本当の症例数は確定したものより高いし,もしかしたらずっと高いかもしれない。我々は,これが世代で最悪の公共の保健の危機であることを明確に認識しなければならない。これを季節性インフルエンザと比べる人々もいるが,それは正しくない。免疫がないために,これはもっと危険なものである。自分は英国民に対して正直に言わなければならない,より多くの家族が,彼らの愛する人たちを寿命に先立って失うことになる。」

そうなのだ。

私たちが想像しているよりも、はるかに多くの人たちが、新型コロナウィルスで死ぬ可能性が高い。

その多くは高齢者になるだろう。

事実、イタリアではすでに命の選別が始まったいる。

イギリスでも、いかなる隔離政策を実施しても、ピーク時には用意された病床数をはるかに超える患者が出ると試算されており、それを元にジョンソン首相は国民に覚悟を求めたのだ。

日本人も、ウィルスによって愛する人を失う非常事態を覚悟しなければならない。

おそらくそれは避けられないのだろう。

我が家でも、離れた岡山に年老いた親たちがいる。妻の母親は先日自宅で転倒し、現在入院中だ。自宅に残った高齢の義父も心配であるが、介護に行って逆に感染を広げるリスクも考えなければならない。

多くの日本人がこれから厳しい選択を迫られることになる。

超高齢化社会である日本にとって、新型コロナは本当に厄介なウィルスなのだ。

政治家も専門家も、いつかその「不都合な真実」を国民に説明せざるを得ない日が来るだろう。

日本人の7割、1億人近くが免疫を獲得するまでウィルスの流行を止めることはできないとすれば、自ずと犠牲となる人の数も想像がつく。

本当に危機に直面した時、多くの日本人がどういう反応を示すのか?

政府には、パニックを恐れて甘い見通しを語るだけでなく、科学的なデータに基づいた最悪のケースも発信してもらいたい。

そうした情報があれば、多くの日本人は自らの身の処し方を判断するだろう。

メディアも、東京オリンピックを心配する前に、日本の医療現場の状況や非常時の準備、唯一の希望であるワクチンの開発について、もっと現場を取材すべき時である。

政府の広報機関に甘んじるのではなく、今こそもっともっと専門家の本音を引き出し、多くの日本人にウィルスの本性を伝え、正しい危機意識を訴える報道が求められている。

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