<吉祥寺残日録>白内障手術は「拷問」に似ていた #200908

昨日、左目の白内障手術を受けてきた。

結果は良好。

今朝再びクリニックで診察を受け、パソコンの許可も得たのでこうしてブログに手術の様子を書き残しておこうと思う。

私が白内障手術を受けたのは、JR中央線武蔵境駅の北口駅前にある「清水眼科」だ。

女医である清水院長は、1万件以上の白内障手術をこなしたエキスパートだということで、この近隣の白内障患者が連日大勢詰めかけている。

そして白内障の手術が行われるのは、毎週月曜日の午前中と決められていた。

クリニックからは10時に来るように言われていたが、付き添いに行くという妻が「雨が止んでいるうちに行こう」とうるさく言うので早めに家を出たため9時過ぎには武蔵境についてしまった。

仕方なく、清水眼科の1フロア下にある「ロイヤルホスト」で時間を潰すことに・・・。

ファミレスに入るのは、果たして何年ぶりだろう。

店内は適度に空いていたが、コーヒーだけというメニューがなかったので、「ドリンクバー」を注文してホットココア2杯と野菜ジュースを飲んでから清水眼科に向かった。

「清水眼科」に着いたのは9時45分ごろ。

月曜の朝は手術を受ける患者と付き添いの人だけなので、通常の診察日に比べて多少空いていた。

受付でまず「短期滞在手術同意書」というものを提出する。

「ポケットの中を空にして荷物はすべて付き添いの人に預けたうえで、こちらの椅子におかけください」と看護婦さんに言われ、患者さんたちが集まる席に座るよう促された。

次に、マスクをしたまま耳栓とヘアキャップを装着され、看護婦さんが定期的にやってきて目薬をさしてくれた。

聞くと、瞳孔を開く薬や抗生物質が数種類入っている目薬だと言う。

私と同じような白内障の患者さんがこの日は19人。

このクリニックでは毎週だいたい20人ぐらいの白内障患者の手術を行っているそうで、それはまさに流れ作業のようだった。

上の写真は、すべての手術が終わった後、院長の許可を得て撮影させてもらった手術室の様子だ。

手術中は照明が落とされ薄暗い状態が保たれるのだが、この20畳ほどの部屋に手術用の椅子が2つ並び、院長と応援の男性医師で手分けして次々に手術を行なっていく。

手術を終えて一人が出てくると、手術室の前で待っている次の患者が呼び込まれる。

どちらの先生に当たるかはタイミング次第で、手術室から出てきたおばさんが看護婦さんに「清水先生にやってもらえると思っていたのにガッカリだ」と文句を言っている様子も目撃した。

それだけ清水先生は名医として知る人ぞ知る存在らしく、看護婦さんも困った顔をして「もう一人の先生もとてもお上手ですから」とおばさんをなだめていた。

定期的に看護婦さんが患者たちの間を巡回し何度も目薬を指し、1時間以上待っただろうか?

ようやく私の名前が呼ばれ、「もうすぐ手術ですので、お手洗いを済ませておいてください」と声をかけられた。

トイレから戻ると手術室前に呼ばれ、「次ですから、前の方が出てこられたら中にお入りください」と告げられ、手術室の前に腰掛けてしばらく待つ。

ここでまたまた目薬。

どうやら、この目薬には麻酔の効果もあるらしい。

さあ、いよいよ私の番だ。

手術室に入ると、奥の方の椅子に座るように指示される。

室内は薄暗く、隣で別の人が手術を受けているのがぼんやりとわかる程度だ。

私の担当は清水院長だった。

椅子が倒されると、上から私を照らす2つのライトだけが目に映った。

清水先生の声がして、「じっと照明を見ていてください。動くと危ないので、何かあったら声でおっしゃってください」と言う。

まず最初に、たっぷりの目薬で目を洗い、その後目をつぶるように指示されて目のまわりを消毒、この作業を繰り返す。

そして、シートのようなものが顔に貼り付けられる。

手術する左目の部分だけ穴が開いていて、まぶたが閉じないよう、目を見開いた状態のまま固定する器具のようだ。

それでなくても目が大きくない私にとって、この器具はかなり怖い。

上下のまぶたに何かが食い込んで無理やり目を開けさせられているのだ。

目に映るのは頭上のライトだけ・・・

私の脳裏に浮かんだ言葉は「拷問」の2文字だった。

きっと拷問を受ける人間の気分って、こんな感じなんだろう。

身動きも許されず、無理やり目を開かされ、普段触られることもない目の玉をいじられるのだ。

近頃、100年ほど前の戦争の歴史を調べているせいもあって、自分が敵に捕まって拷問を受けているシーンが脳裏に浮かんだ。

殴られるなら耐えられるかもしれないが、こうして目を攻撃されると私は簡単に白状してしまいそうだと思った。

準備が終わり、ついに手術が始まった。

それは一段と拷問のようだった。

何か得体の知れない器具が私の左目に当たっている。

部分麻酔が効いているらしく痛くはないのだが、これまでに味わったことのない強い違和感と恐怖を感じる。

「じっと照明を見て」と時々院長の声が聞こえるのだが、何かの器具に押されて私の目の玉が勝手に動くのだ。

痛みではないが、強い圧力は感じる。

目の玉が触られ押される感覚、こんなの経験は生まれて初めてだ。

自然と体に力が入る。

知らず知らずのうちに息が荒くなってくるのを感じる。

手術はわずか10分ほどの簡単なものと聞いていたが、この目の玉をいじられる10分間は、予想していたよりもずっとずっと長く感じられた。

白い2つの照明がぼやけてくるように感じる。

おそらく水晶体が破壊されたのだろう。

でも、まったく何も見えなくなるわけではない。

目を押されるたびに上の照明がグラグラ揺れ、ちょっと気持ち悪くなってくる。

永遠に続くかと思えた拷問のような時間だが、「はい終わりました」との院長の言葉で救われた。

椅子が起こされ、立ち上がって手術室を出る。

少しぼやけてはいるが、ちゃんと見える。

水晶体が人工レンズに置き換わったはずだが、さほどの違和感は感じない。

先ほどまでの「拷問」に比べれば、終わってしまえば痛みも残らず、確かに簡単な手術だったのだろう。

待合室に戻ると、受付の前に人が集まっていてその中に妻もいた。

付き添いの人たちを集めて、看護婦さんが術後の注意説明を説明していたのだ。

窓の外を見ると、台風の余波で時折強い風が吹き抜けている。

看護婦さんが私のところにやってきて、術後の目薬をさしてくれた。

左目はまだぼやけ、明るいところが光って見えるが、視力そのものには問題はなさそうだ。

すべての患者さんへの手術が終わるのを待って、院長が一人一人の患者を順番に診察室に呼び込み術後の様子をチェックする。

私の左目をチェックした院長は「問題ないですね」と言った。

まずは、ひと安心だ。

手術代は3割負担で、4万8420円。

全てが終わって清水眼科を出たのは、到着から2時間半後の正午過ぎにことだった。

白内障の手術後には、いろいろ守るべきことがある。

まずは目薬。

手術前日から点眼を始めた2種類に加えて「リンデロン点眼・点耳・点鼻液」が追加され、1日4回3種類の目薬をささなければならない。

「リンデロン点眼液」も炎症を抑える薬だそうだが、これが結構面倒くさい。

この3種類の点眼はなんと1ヶ月から1ヶ月半も続けるのだと言う。

それ以外にもいろいろ注意事項がある。

基本は、とにかく手術した目を触らない、濡らさないこと、これが徹底して求められる。

手術した日は入浴禁止、洗顔は3日間禁止、洗髪は10日間禁止だ。

読書やテレビ、家事や食事は普段通りでOKだが、飲酒は1週間禁止となる。

仕事はデスクワークなら翌日から始められるが、埃っぽい場所での作業や力を入れる仕事などは先生の許可を得てからとなるらしい。

私の場合は無理に目を使う必要もないので、手術の後はのんびり昼寝をしてパソコンも控え、なるべく目に負担をかけないように注意して1日過ごした。

そして今朝、術後の経過を診てもらうため、中央線に乗って再び清水眼科に出向く。

最初に視力検査を受けると、手術を受けた左目の視力は1.0。

レンズを添えると1.5まで見えた。

悪くない。

乱視が補正されたせいだろうか、手術前よりもスッキリと見える気がする。

私が選んだ人工レンズは遠いところに焦点を合わせたタイプなので、遠くの景色やテレビはずっと見やすくなった。

ただし、水晶体と違って遠近の調整が効かないため、手元はボケボケだ。

さらに面倒なのは、今まで使っていたメガネが全然合わなくなってしまうこと。

私は普段は眼鏡をかけずに暮らしているが、パソコンを使う時にはブルーライトをカットする手元用メガネ、車を運転したり映画を観たりする時には遠く用のメガネを使っていたが、どちらの眼鏡も作り直さなければならない。

視力検査の後、清水院長の診察を受ける。

私の目をチェックした院長は、経過は順調だとして、入浴や運動、自転車に乗ることも許可してくれた。

パソコンを使うことも問題ないと確認したので、晴れてここにブログを更新できることとなったわけだ。

ただし、埃っぽい場所やプールなどは引き続き禁止で、洗顔や洗髪もできない。

まあ当分の間、あまり汗をかかないよう大人しく過ごそうと思っている。

白内障の手術を受けている10分ほどは本当に不快だったが、終わってみれば皆さんが言う通り簡単な手術だった。

麻酔がきれると目がゴロゴロしたり引きつったりするという話を聞いていたが、そうした不快感もまったくない。

むしろ、遠くの文字がはっきり読めるようになった気がする。

クリニックの帰り、中央線のガードに書かれている「中央線吉祥寺駅」という文字が妙にくっきり見えて、ちょっと嬉しくなった。

やっぱり、目が見えるというのは有難いことだ。

本を読んだり、テレビを見たり、そして旅行に行っても目が見えなかければ楽しさも半減するだろう。

私には、まだまだ行きたい所がたくさんある。

見たいものがいっぱいあるのだ。

ここは大人しく先生の指示に従って、自制すべき事柄を守りながら、目の回復に全力をあげよう。

そして、新しい目を通してこれからの世界を眺め、コロナが収束した暁にはまだ見ぬ国々をたくさん訪れたいと夢は早くも膨らんでいる。

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