<吉祥寺残日録>世界同時ドキュメント私たちの闘い #200602

新型コロナウィルスは、単に感染者や死者を増やすだけではなく、世界中の人々の行動に多大な影響を及ぼしている。

Embed from Getty Images

例えば、今全米で吹き荒れている抗議デモ。

きっかけはミネソタ州ミネアポリスで5月25日に起きた白人警官による黒人男性ジョージ・フロイドさんに対する殺害事件だった。

Embed from Getty Images

偽札を使用したとの疑いで路上に取り押さえられたフロイドさんの首を、警察官が長時間膝で踏み続けた。フロイドさんが「息ができない」と訴えても警察官は膝を離そうとはせず、そのままフロイドさんは窒息死した。

その一部始終が動画に撮影されインターネットにアップされたことから、これに抗議する黒人中心の抗議活動が瞬く間に全国に広がった。

Embed from Getty Images

しかし、抗議する人たちの怒りは、単に警察官だけに向けられたものではない。

コロナ危機の中にあって、裕福な人たちが自宅に閉じこもる中で、社会を支えるために働き続けなければならなかった人の多くが黒人だった。その結果、他の人種に比べて、コロナでの黒人の死亡率は高い。

ますます広がる一方の貧富の格差。

そうした社会に鬱積した不満の声に一向に向き合おうとせず、ツイッターで「取り締まりが甘い」と州知事を非難し、軍の出動も示唆するトランプ大統領に多くの人々の怒りが向けられている。

トランプ大統領は、アメリカの「強欲資本主義」の象徴だ。

私は、このまま貧富の差が拡大し続ければ、アメリカで社会主義革命が起きても不思議ではないと以前書いた。すぐにそこまで発展することはないだろうが、そうした素地がアメリカ社会の中に確実に育ちつつあり、新型コロナウィルスがそれを加速することは間違いないと思っている。

しかし、人間は決して「醜いだけの生き物」ではない。

それを感じさせてくれた番組のことを書いておこうと思う。

NHKスペシャル「世界同時ドキュメント 私たちの闘い」。

アメリカやヨーロッパの様々な国籍、様々な職業の人たちに、ロックダウンが続いた時期に撮影した「自撮り映像」を送ってもらい、日本で構成・編集したドキュメンタリーだ。

アメリカやヨーロッパでは、膨大な数の人々が感染し死亡した。しかし、その数字だけでは表せない一人一人の物語を、現地取材できない状況の中でまとめ上げた作品である。

自宅のベランダでオペラを歌い近所の人たちを励ますイタリア人歌手、感染爆発したニューヨークを救うために地方都市から応援に駆けつけた看護師たち、自宅にある3Dプリンターを使ってフェイスシールドを毎日作り感染リスクと戦う地下鉄職員に届けたアーティスト。

それぞれは、小さな物語だが、世界中で多くの人が自宅にこもりながら、自分にできることで誰かに貢献をしようと努力した2ヶ月間の記録だ。

一つ一つは特別すごい話ではないのだが、見ているとなぜか涙が出そうになる。

人は、誰かのために役に立っていると思えることに幸せを感じる生き物なのだ。

そんな人間の良い部分が世界から届いた自撮り映像にはあふれていた。こうした映像を見ていると、自分も頑張ろう、誰からの役に立とうと思えてくる。

日本のテレビマンたちも「withコロナ」の時代の番組作りを試行錯誤している。

同じく昨日録画を見たNHK制作の「リモートドラマ Living」。

人気脚本家の坂元裕二のオリジナル脚本で、「広瀬アリス×広瀬すず」「瑛太×永山絢斗」という兄弟姉妹による2人芝居を短い作品に仕上げた。

個人的には、結構面白かった。

別に「リモート」であることが目新しかったわけではなく、こうして多くの制約の中でドラマを作ると、まさに台本そのものが極めて重要になり、演劇に近づくことがわかった。

脚本さえ面白ければ、派手な演出がなくてもドラマは面白いという基本が非常によく理解できた。

テレビマンも与えられた環境の中で、誰かを幸せにするためにありったけの知恵をしぼる。そこに新たな表現が生まれる可能性を感じた。

そしてもう一つ。

昨日の夜8時、新型コロナの収束を願って全国で一斉に花火が打ち上げられた。

日本煙火協会青年部に属する花火業者の有志が企画したもので、感染防止のため、打ち上げ会場に人が集まらないよう事前に場所を公表せずに実施した。

コロナのせいで、今年の夏の花火大会はほぼ全て中止になったという。仕事を失った花火師たちが、打ち上げられる機会を失った花火を使って誰かに元気を贈ろうと企画された。

当然、花火師たちに儲けはない。でも、世の中を少しでも明るくしようと自分たちができることを行った。その気持ちが、嬉しいではないか。

残念ながら私は午後8時ということを知らなかったので、花火を目撃することはできなかったが、そうした取り組みが行政主導ではなく自主的に行われたというニュースに温かいものを感じる。

Embed from Getty Images

自分の利益ばかりを主張する政治家たちの言動を見ていると、人間不信に陥ってしまいそうだが、危機の時こそ、人間の美しさ、素晴らしさも見えてくるものなのだ。

私もこのブログを通して、そうした人間の良い部分を少しでも発信できればと感じている。

広告

1件のコメント 追加

  1. wildsum より:

    人間の善と悪の両面をきちんと整理されていて、すばらしいです。

コメントを残す