<吉祥寺残日録>感染者100万人の世界 #200403

新型コロナウィルスの感染者が全世界で100万人を突破したという。

50万人に達するまでは76日かかったが、100万人まではわずか8日だった。中国で数万人の感染者が出たと言って大騒ぎしてからまだ1−2ヶ月しか経っていない。

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パンデミックという言葉は知っていたが、全世界を巻き込むこれほどの大流行を目撃するとは予想していなかった。しかも、世界中の人がリアルタイムでその急速な進展におののきながら目撃し続けているのだ。

パンデミックをこれだけ克明に目撃するのは、間違いなく人類史上初めての出来事である。

CNNで報じられた数字によれば、世界人口の実に93%、73億人が何らかの形で行動制限下に置かれているそうだ。ものすごい数字である。SF映画でこんなストーリーがあったとしても、今回の騒動の前なら誰もそんなことが現実になるとは信じなかっただろう。

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でも、大流行はまだ始まったばかりだ。

現在の世界の人口はおよそ77億人と言われている。その70%以上が感染して集団免疫を持つまで、本当の意味でのパンデミックは終息しない。つまり、残り54億人がウィルスに感染するか、その前に有効なワクチンが開発されるかの競争なのだ。

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世界最大の感染者を出しているアメリカは、なりふり構わない行動に出始めている。

たとえば、世界的に不足しているマスク。

アメリカ人はもともとマスクをする習慣が全くなく、マスクをつけたアジア人を気味悪がって差別したりしていたのだが、ここに来てマスクの有効性が浸透し始め、大金を払って中国産マスクを買い占める所業に乗り出した。

フランスのテレビが報じていたところでは、フランスが中国に注文していたマスクが上海空港を離陸する直前、アメリカ人バイヤーに横取りされたというのだ。アメリカはフランスが契約した金額の3倍を提示し、それに中国当局が応じるという信じられないような横暴がまかり通っているらしい。

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もともと花粉症の季節でマスクの需要が高まる日本ではコロナ騒動の前に注文したマスクが一向に届かない。そうしているうちに、世界中の国が中国にマスクを大量注文するようになり、今でも前代未聞のマスク争奪戦が起きているのだ。

その最中、安倍総理は突然、布製マスクを日本全国の家庭に2枚づつ配ると発表した。確かにマスク不足はずっと大問題となり、特に医療現場では深刻化しているとはいえ、現在の最大の関心事は医療崩壊をどのように防ぐかということ。このタイミングでの発表に多くの国民が呆れ返った。

マスク不足が始まって2ヶ月以上経ってから打ち出された対策が、布製マスク、各家庭2枚の配布である。しかも、それに200億円もの予算が使われるという。

「その金額があるのなら、収入を断たれた人たちへの給付に使うべきだ」

ネット上では早速「アベノマスク」という新語が登場し、この政策を揶揄する書き込みが溢れた。当然だろう。

200億円あれば、マスクの生産ラインをいくつも作れたのではないか?

事実、日本国内で普通のマスクを生産している企業はある。そうした企業にお金を出して生産ラインを増強してもらい、できたマスクを全量政府が買い上げて必要なところに供給することもできたのではないだろうか?

経産省は一体何をしているのか?

安倍総理が経産大臣に支持して、経産省に必要物資を生産する責任を負わせれば、日本の民間企業は間違いなく協力しただろう。もしマスクが国内の需要を上回れば輸出に回せばいい。今やマスクは戦略物資である。コロナ騒動が終わったとしても、マスクを中国に依存する体制は見直さざるを得ないのだ。

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もう一つ、アメリカがスーパーパワーを振りかざしている分野がある。

それは、原油だ。

今回のコロナショックで株価が暴落したきっかけとなったのは原油価格の急落だった。その原因はサウジアラビアからの原産提案をロシアが拒否したこと。これでサウジが逆ギレして大増産に舵を切った。OPECによる価格調整機能が失われ、世界中で石油がだぶついた。

その結果、今や世界最大の産油国であるアメリカではシェールオイルの企業が苦境に陥った。サウジやロシアに比べて生産コストが高いのだ。1バレル20ドルという低価格が続く中、ついにアメリカのシェール企業の中に倒産するところが出始めた。

オイル企業の株価は暴落し、市場のお荷物となり、トランプ大統領の再選戦略にも影響を与え始めた。トランプさんがそれを放置しておくはずはない。

そこでアメリカがサウジとロシアの仲介に乗り出すと発表した。具体的アメリカが行ったのは、軍事的な協力をやめるとサウジに脅しをかけることだ。サウジはトランプさんが大統領就任後最初に訪れた友好国であり、イランと対抗しイスラエル有利の中東情勢を築く上で最重要なパートナーだった。

しかし、今はそんなことを言っていられない。「もしアメリカの言うことを聞かないならばサウジのことをもう守らない」と露骨な脅しをかけて原油価格をあげようと動き出したのだ。

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王族内での激しい権力闘争を制しサウジの実権を握っているムハンマド皇太子にトランプ大統領自ら電話をかけたうえで、「サウジアラビアとロシアが近く原産で合意するだろう」とツイッターに書き込んだ。

この電話で、トランプさんはどんな言葉でムハンマド皇太子に圧力をかけたのか、考えるだけで恐ろしい。世界最大の軍事大国はいざとなれば力で同盟国をねじ伏せる。

トランプさんも必死なのだ。

マーケットの混乱を抑える目的でFRBが始めた量的緩和は前例がない規模で進められていて、大量の国債などを購入してFRBの総資産はこの1ヶ月で1兆6500億ドル(約176兆円)増えたという。

アメリカの失業保険申請が空前の664万件を記録したという衝撃的なニュースに対してもニューヨーク市場が落ち着いていたのも、無制限のFRBマネーが影響している。

それでも、人間ができることには常に限界があるのだ。

わずか2週間で1000万人の失業者を生んだアメリカの今後は予断を許さないと私は思っている。状況は、リーマンショックというよりも1920年代の大恐慌時代に似てきた気がする。貧困層を中心に巨大な社会不安が超大国アメリカを襲う。コロナショックが長期に渡れば、誰も予想しなかったような未来が待っているかもしれない。

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