<吉祥寺残日録>世界の債務残高は3京円? #200531

緊急事態宣言が解除されて初めての週末。

吉祥寺の街には多くの人が戻ってきて、空いていた道路も簡単に横断できなくなってきた。

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在宅で時間がたっぷりあるので、このところ気になった番組を片っ端から録画する癖がついてしまった。たちまちハードディスクがいっぱいになるので、2018年に録画したまま見ていなかった番組を昨日2本見た。

2本ともNHKスペシャルで、一つは2018年9月に放送された「“樹木希林”を生きる」。亡くなった樹木希林さんの最晩年に密着したドキュメンタリーだが、改めて樹木希林さんの存在感と面倒臭さを感じる。

何も質問しないNHKのディレクターさんを心配して、希林さんが目玉になりそうな情報や場面を提供しているのが面白かった。長くテレビの世界にいると、撮影しながら取れ高を計算している。美味しい場面があれば、これで行けるなと思いながらその場で構成を考えるものだ。希林さんもそうだったのだろう。

ただNHKのディレクターさんは何を面白がっているのか反応が薄かったようで、被写体である希林さんの方がむしろ心配になったようだ。でも、決して必要以上の人間関係を求めない希林さんが、一人の密着を担当する東京に上がってきたばかりのディレクターを心配する姿は、希林さんの根っこのところにある優しさを強く感じさせた。

本当に、日本映画界にとって惜しい女優さんだった。

そういえば、カンヌ映画祭などが次々に中止になる中で、俳優のロバート・デ・ニーロさんらが中心となってオンライン映画祭「We Are One:A Global Film Festival」がyoutube上で行われているそうだ。

新型コロナウィルスは、映画館で映画を観るという文化の形を大きく変えてしまうかもしれない。

今日もう一本見た録画番組はNHKスペシャル「マネー・ワールド〜資本主義の未来〜第3集 借金に潰される!?」。

爆笑問題の二人が司会を務める2018年10月に放送された知的エンターテイメント番組である。

この番組の中で、ある衝撃的な数字が紹介される。それは世界全体の借金の総額である。

その金額はなんと164兆ドル、日本円で1京8500兆円。

これは2016年時点での、世界全体での個人・企業・政府が抱える借金の総額だそうだ。普段目にすることのない数字だけに、まったく実感が湧かないほどの金額である。

番組を見ながら、私が考えたのは、コロナ危機への対応で各国が前例のない大規模な金融緩和に乗り出している現実だ。

世界の借金は、この時点よりも大幅に増えていることは間違いない。

そこで、調べてみた。

見つかったのは去年2019年の数字で、世界の債務残高は250兆9000億ドル。日本円にすると、およそ2京7200兆円に急増していた。

この数字は、当然コロナ危機が起きる前の2019年4−6月期での数字であり、世界的な異次元緩和が行われた後では、3京円を突破しただろうと推測される。

この数字の出元である経済誌フォーブスの記事を引用しておく。

世界が借金に溺れている。

国際金融協会(IIF)の調べによると、世界全体の債務残高は2019年4〜6月期に250兆9000億ドル(約2京7200兆円)と、過去最高に膨れ上がった。

IIFの報告書は次のように説明している。

「金融緩和に促進され、世界の債務残高は19年(の上半期)にさらに7兆5000億ドル増加し、足元でも過去最高となる250兆ドル超の水準で推移している」

つまり、タガが外れたような今の借り入れ状況は、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)をはじめ、世界の主な中央銀行が金利を極端に低く抑えているのが一因となっている、ということだ。

そうした超低金利を背景とした借り入れで、世界の先頭に立っているのは中国と米国である。19年上半期に増えた7兆5000億ドルの債務のうち、60%強はこの2大経済大国のものが占めていた。

上半期の増加分は、世界全体の国内総生産(GDP)の3倍超に当たる。

出典:フォーブス「「債務漬け」の世界 史上最大の250兆ドルに膨張、来年は不安も」

これだけ借金が膨れ上がると、世界の経済成長が抑え込まれてしまうとIMFは指摘している。さらに・・・

「政府債務の水準が高い国は(中略)、財政刺激策に頼るのが難しくなる可能性がある」

あからさまに言ってしまえば、イタリアやブラジル、ギリシャ、アルゼンチンといった国々は、景気停滞から抜け出すための支出ができなくなるかもしれない、ということだ。経済が低迷し、失業率が高い状況では、政府が財政出動によって景気を押し上げようとするのが普通なのに、その策すら取れなくなってしまうかもしれない。

出典:フォーブス

NHKスペシャルで衝撃的だったのは、ミャンマーでの取材だ。

自給自足の生活をしている農村に外資の金融企業が競って入り込み、金利の意味さえ知らない農民たちに金を貸し付けているという現実だった。

取材をした農家では、借りた金でオートバイを購入したが、この家の現金収入は捕まえたネズミを町で売ることぐらい、とても借金が返せない。そのため借金返済のためにまた借金をするような悲劇が、私たちが知らないミャンマーの農村で起きているというのだ。

世界的に金余りの状況が続き、先進国ではもはや借り手を見つけるのが困難になっている。そのため、日本の消費者金融もこうして資本主義から隔絶していた発展途上国の奥地へと進出している。これはどう考えても異常なことだ。

近い将来、間違いなく世界経済は大きなしっぺ返しを受けることになると私は確信している。

しかし、株式市場は経済活動の再開を好感して急速に値を戻し、日経平均の先物は先週末2万2000円の大台を回復した。

このまま不況下の株高が生まれそうな予感がする。

何かが、おかしい。絶対におかしい、と私は思う。

このままマネーの膨張が続けば、バブルはどんどん膨らみ、いつかは悲惨な形で崩壊するだろう。百年に一度の大恐慌は本当にやって来る可能性が高い。そうなれば、貧富の格差はとてつもなく広がり、ある種の社会主義革命がアメリカで起きても不思議ではない。

私はそれほどに強い危機感を抱いているのだ。

1980年代のバブルを経験した私たち日本人は、ここはアメリカの強欲資本主義に引きずられることなく、冷静な目で「withコロナ」の時代を見つめる必要がある。

世界の債務残高という指標も、今後は注意深くウォッチしていこうと思っている。

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