<吉祥寺残日録>パンデミック宣言 #200312

ついにというか、やっとというか?

WHOが世界的大流行「パンデミック」になっているとの認識を初めて示した。

テドロス事務局長は、「過去の2週間で中国以外での感染者数は、13倍に増え、国の数は3倍になった」としたうえで、「われわれは、感染の広がりと重大さ、そして対策が足りていないことに強い懸念を持っている」と語った。

こんなになるまで放置したWHOの責任は免れないが、このところWHOの本部があるヨーロッパでも急速に感染が広まったので、パンデミックを認めざるを得なくなったのだろう。

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中でもイタリアの状況は深刻だ。

北部ロンバルディア州では医療崩壊が起きつつあり、中国の武漢を思い起こさせるような悲惨な状況になっているようだ。

すでに感染者数は1万人を超え、死者も630人を超えている。人工呼吸器や病床の不足が深刻で、疲労困憊した医療関係者たちはSNSで国民に対し外出しないで自宅に止まるよう呼びかけている。

これを受けてイタリア政府は、全土の移動制限に加え、新たに薬局と食料品店以外の全ての店舗の休業を求めた。

中国で起きたことは、世界で起きることがイタリアで証明されたわけだ。

イタリア政府はEU各国に救援を求めたが、各国とも自国の対応に備えなければならず、とてもイタリアを助ける余力はない。そんな中で、イタリア政府に手を差し伸べたのは、皮肉なことに中国だった。

中国政府は早速、イタリアに人工呼吸器1000台とマスク2000万枚を送ると表明し、医療チームも派遣することが可能だと伝えた。

その余力があるなら、日本企業が中国で生産しているマスクの輸出規制を解除しろと言いたいが、予想通り、中国政府は新型コロナを制圧した知見をネタに世界での影響力を強化しようと動き始めた。

本当にしぶとくしたたかな国である。

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各国の感染対策を見ていると、それぞれのお国柄や指導者たちの個性が現れている。

ヨーロッパで2番目に感染者が多いフランスでは、「医療予備役」という制度があるという。

高齢で引退した医師やこれから医師になるインターンや医学生が医療予備役として登録していて、今も3600人の医療予備役の人たちが新型コロナ対策に関わっているという。政府が用意したプラットフォームに自分の意思で登録する志願制で、直接的な診療は現役医師が担うが、電話相談や後方支援など医療の知識を生かして不安を抱える人たちの対応に当たったりしているという。

日本の相談センターに電話しても、なかなか電話が通じない上に、電話応対する人に医療の知識がなく、用意されたマニュアルだけしか答えられないとの不満を聞く。そうした所に医学を学んだ人材を配置するのは極めて有効であろう。

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ドイツでもすでに感染者数が1000人を超えたが、メルケル首相は会見で、最悪の場合ドイツ国民の60−70%が感染する可能性があると率直に語った。

さすが現在の世界で数少ない尊敬できる政治家の発言は違う。国民を誤魔化すのではなく、専門家から得たネガティブな情報をリーダーの責任ではっきりと国民に伝え、各自に責任ある行動を促す、こうした姿勢が重要なのだ。

国民の理解力を信頼し、重要な情報を包み隠さず話し、政府としての取り組み、各自に守ってもらいたい行動をきちんと伝える。後は国民の良心を信じるということだろう。

これこそ中国とは違う、民主主義国のリーダーの常識的な在り方だと私は思う。

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それにひきかえ、この人はやはり異質だ。

日本時間の午前10時から国民向けのメッセージを発表したトランプ大統領。

新型コロナウィルス対策として発表したのは、イギリスを除くヨーロッパ全土からの人と物の流入をストップするという意表をつく方針だった。

トランプさんは、これまで一貫して新型コロナで楽観的な発言を繰り返してきた。流行は避けられないと発言したCDCのナンバー2はそれ以来公の場に出て来なくなった。トランプさんの逆鱗に触れたのだと想像される。

専門家の意見を聞かず、自らの直感に頼るトランプ大統領。

ウィルスの蔓延よりも気になるのが株価の急落である。

今日の演説でも、アメリカ経済はどこよりも、いつの時代よりも強いと強調していた。金のことなら絶対の自信を持っているトランプさんにとって、史上最高値の株価は再選への一番のセールスポイントであり、何が何でもこれ以上の下落は避けなければならない。今日の演説は、そうしたトランプさんの焦りが目立つ一方で、どのようにしてウィルスを食い止め、医療保険が未整備なアメリカで多くの死者が出るのを防ぐのか、具体策は全くなかった。

世界からうらやましがられるCDCのような組織があっても、その上に立つリーダーに国民を守る哲学がなければ宝の持ち腐れとなってしまうのだ。

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さて、こうした世界のリーダーたちの振る舞いと比べて、我が安倍総理はどうだろう?

国民のパニックを恐れて不都合な情報を隠すのではなく、メルケルさんのような率直な態度で直接国民に語りかけて欲しいと思う。

日本人の理解力は世界トップクラスだ。

安倍さんには是非、国民を信頼して国がやるべき仕事をどんどん推進してもらいたい。

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