<吉祥寺残日録>「感染拡大特別警報」の東京で思ったこと #200730

木曜日に感染者数が多くなる傾向はすっかり定着してしまった。

東京都の今日の感染者数は376人。

先週の木曜日に記録した最多記録を更新した。

会見に臨んだ小池都知事は、「感染拡大警報」を改め「感染拡大特別警報」の状態になったと、またまた新語を作り出した。

「ステイホーム」や「東京アラート」はどこへ行ってしまったのだろう?

そのうえで、酒類を提供する飲食店やカラオケ店には夜10時以降の営業を自粛するよう要請した。

ガイドラインを守っている店がこの要請に応じた場合には、協力金として一律20万円を支給することも発表したが、国に対して「予備費の活用」を求め、東京都もすでに財政に余裕がないことを示した。

全国の地方自治体の財政が火の車の中、東京都だけは突出した税収を集め、膨大な黒字をため込んでいた。その自前の資金を使って東京五輪の誘致も行ったわけだが、新型コロナと五輪の延期によって、自慢の財政ももはや底をつきそうな状況なのだろう。

出典:日本経済新聞

今月に入って確実に増え続けている東京都の感染者数。

それは全国に波及して、昨日1000人を突破したばかりの全国の新規感染者数は、今日早くも更新された。

東京都医師会は、政府に対して直ちに国会を開いて、自粛要請に応じない事業者に対し強制力を持たせる法改正を求めた。

確かに夜の街関連で行政の言うことを聞かない店が多いのだろうが、とは言え夜の街だけを絞り上げるだけで本当に感染拡大が防げるのか、私個人は甚だ疑問である。

コロナを本当に封じ込めるためには、企業活動を本格的にストップさせる他に方法はない。しかし、現在連日発表される大手企業の決算発表は、再びロックダウンに戻ることを躊躇させるものだ。

JR東日本の4−6月期の決算は過去最悪の1553億円の赤字、ディズニーランドを運営するオリエンタルランドも4−6月期は95%の減収で246億円の赤字となった。

こんなことを続けていたら、企業も雇用も維持できないのは明らかなのだ。

結局は、ブラジルのように「見て見ぬ振り」をして経済活動を維持するしか道はないのだろうか?

その時、医療現場はどうなるのか?

企業活動は維持できるのだろうか?

世界中が答えが見つからないまま、ただひたすらワクチンの完成に希望を託し、各国が熾烈な開発競争を続けている。

そんな中で、1ヶ月前に録画したコロナ関連の番組を見た。

BS1スペシャル「見えざる敵に挑む~AIが迫る感染爆発~」

AIについては特段驚くことはなかったのだが、この番組が取材した3人の人物にとても興味を持った。

一人目は、ジョンス・ホプキンス大学工学部の大学院生エンシャン・ドン。

ジョンス・ホプキンス大学という名前をすっかり有名にした世界の新型コロナウィルス感染者数をリアルタイムに集計するシステムを開発したのは、この大学院生だった。

彼は、中国山西省出身の留学生である。

AIを使って膨大な情報を集めダッシュボードを作ることを学んでいたドンは、担当教授のアドバイスを受けて当時中国で流行し始めていた新型コロナの感染者数をまとめるダッシュボードを開発した。

最初は手作業で集めたデータを入力していたが、感染が世界中に拡大する中でAIを活用して精度を高めた。そして、ドンたちが開発したダッシュボードが今や世界のスタンダードになったことはご存知の通りだ。

2人目は、26歳のAI研究者ユーヤン・グー。

上海生まれのグーは、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)を卒業し、組織に属さない独立したAIスペシャリストになった。

彼が一躍注目されたのは、新型コロナによるアメリカの死者数の予測モデルだった。彼がAIを使って作った予測モデルは彼の母校MITやワシントン大学など並居る研究機関や大学の予測よりもはるかに正確だったのだ。

グーが使っていたのは毎日の死者数のデータだけ。

感染者数は検査の数で大きく変動するが、それに比べて死者数は正確だからだという。

それに対して大学などでは、死者数だけでなく、感染者数、検査数、人の移動率、マスク使用率、大気汚染度、喫煙率などたくさんのデータを予測に利用していた。

この事実は、我々に重要な示唆を与えてくれる。

一番に注目すべきは、やはり死者数の推移だということだ。

それと同時に、私がこの番組を見ながら強く感じたのは、若い中国人たちの優秀さ。意欲的で独創性がある中国の若者たちがアメリカで世界最先端のIT技術を学び、その多くが中国に戻って中国のIT産業を支えている事実だ。

同じ番組内でいくつか日本人研究者の研究内容も紹介されているが、それは飛沫はどのように拡散するかというような想定内のものばかりで、IT分野で日本人が遅れをとっている現実を見る思いがした。

やはり日本人というのは、独創性に欠け、組織力と応用力で勝負するしかないのかと感じたのだ。

そして、番組内で最も私が興味を持ったのがこの人。

3人目は、アメリカのカーネギーメロン大学コンピューターサイエンス学部准教授リタ・シンである。

その容姿と名前から、インド系であることは明らかだ。

シンは、かつてAIを使ってレンブランドの声を再現したことで注目された「声」のスペシャリストである。

声の波長の違いをとらえた「声紋」の分析が彼女の専門だ。

携帯電話の声を分析することで、話している人の教育レベルや社会的背景、身長、体重、顔の特徴などもわかるという。

彼女が今取り組んでいるのは、新型コロナウィルスに感染した人の咳の音を分析することだ。感染者の咳には、他の病気とは違うはっきりした特徴があるのだという。

3月からシステムの開発を始め、正確な診断を下せるようにするために感染者の咳のサンプルを大量にAIに学習させている。

彼女はこのシステムを完成させてスマホのアプリを作ろうとしている。そうすれば、医療体制が脆弱なアフリカのような国々で感染者の診断に活用できると考えているからだ。こうした発展途上国では医師の数が決定的に不足する一方、スマートホンは多くの人に普及するインフラとなっていることに注目した。

こうした独創的な研究者はなぜ日本に現れないのだろう?

シンのようなインド系の知性がアメリカのIT業界を支えているという一面を見る思いがした。

つい先ほど、アメリカの4−6月期のGDPが発表された。

年率に換算してマイナス32%。

もちろん統計を取り始めて以来、最悪の落ち込みである。ニューヨークの街中から人の姿が完全に消えたのだから、この数字は致し方ない。市場の事前予想は、マイナス34%だったから、マーケットはむしろプラスに捉えるのかもしれない。

大統領選挙を秋に控え、アメリカではトランプ大統領と与党共和党が1兆ドル(105兆円)のコロナ対策予算第2弾を打ち出したのに対し、野党民主党は「規模が小さすぎる」として反対し議会が紛糾しているという。

100兆円が「小さすぎる」というのもすごい話だが、コロナのような前代未聞の危機を前にすると、人間のモラルや金銭感覚など簡単に吹っ飛んでしまい、ポピュリズムが大手を振って社会を支配することになるのだ。

さて、あまりに不評なため「アベノマスク」の追加配布を見直すことにした安倍政権が、どんな次の一手を打ち出すのか、注目して見守りたいと思う。

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