新型コロナウィルス対策で、中国をバカにしていた日本が、中国に学ぶ時が来たかもしれない

PCR検査の「湖北省縛り」が事実上撤廃され、日本各地で新たな感染者が次々に見つかっている。

私もずっと懸念していた通り、国内でのヒトヒト感染は1月から始まっていたことが明らかになった形だ。

あれだけ中国人観光客を受け入れておいて、「水際対策を徹底する」と言い張ってきた政府の方針は国内での感染を広げないという意味では完全に失敗だと断言できる。

おそらく政府は国内にウィルスを持ち込ませないことよりも、訪日客の激減によるインバウンド産業への打撃を防ぎ、中国政府との関係を良好に保つことを優先させたのだろう。それは一つの判断であり、それならそれでその方針をきちんと説明すべきだろう。多くの日本人からは支持は得られないだろうが、私はそういう判断もありだと理解する。

しかし、である。

それならなぜ、「水際対策を徹底する」と言って、クルーズ船の乗客を船内に閉じ込めたり、湖北省がらみの人しか検査を受けられないような制限を設けたのか?

多くの中国人を受け入れている以上、ウィルスは国内に入っていることを認め、疑わしい症例については早期発見治療ができる体制をもっと早く整備するべきだったのだろう。

日本政府の対策はどっちつかずで、今日の事態を招いたのは当然の帰結である。

日本人の間からは、中国の対策を批判して、日本と中国は違う、日本では同じようなことは起きないという意見が大勢を占めていた。

だが、中国の対策には学ぶべき点もある。

確かに初期対応は中国ならではの隠蔽体質が災いして武漢の非常事態を招いてしまったが、一旦習近平さんが号令をかけると1000万都市を封鎖し、全土で自宅待機を徹底した。

日本人から見るとやりすぎにも見えるが、人と人の接触を断つことは感染拡大を防ぐには一番の方法である。経済のダメージを顧みず、それを全国で徹底した中国の対策をWHOが高く評価するのも理解できる。こんな徹底した対策をとった国は過去なかっただろう。

中国のメディアを見ると、興味深い記事がいくつもあった。もちろん客観的な報道ではなく、多分にプロパガンダだとわかっていても、日本人にとっても参考になるものも少なくないのだ。

たとえば、感染者の判定方法。

中国は数日前から感染者の判定方法を変更したとして、感染者数が1日で1万5000人近くに急増し世界を驚かせた。それまでのPCR検査に加え臨床検査だけで感染を判断する方法に変えたと説明されていた。

それに関連すると思われる記事が、人民日報の日本語版「人民網」に出ていた。

「清華大学、新型肺炎スマート診断システムを開発」という記事を引用しておく。

 清華大学精密機器学部の尤政院士、臨床医学院の董家鴻院士が中心になり研究開発した新型コロナウイルス肺炎スマート診断補助システムがこのほど応用テストに合格し、臨床試験運用段階に入った。科技日報が伝えた。

董氏によると、同システムはスマート化画像診断、臨床診断、臨床分類の3大機能を持つ。同システムには3大モジュールが含まれ、うち画像診断モジュールは主に新型コロナウイルス肺炎新患患者の貴重な臨床資料のビッグデータ分析に基づき、人工知能(AI)アルゴリズムにより同疾病のCT画像特徴のディープラーニングを行い、新型コロナウイルス肺炎画像のスマートな識別を実現する。臨床診断モジュールは衛生健康委員会が発表した「新型コロナウイルスによる肺炎の診療案(試行第5版)」に基づき、画像及び疫学、症状、重要検査データなどの臨床情報を結びつけ、スマートな診断を実現する。臨床分類モジュールは呼吸機能パラメータをスマートに判読し、新型コロナウイルス肺炎の深刻度を自動的に判断する。

董氏によると、同システムは短時間内に多くの感染の疑いがある患者の胸部CT検査を行い、ガイドに基づき臨床・画像を結びつけた総合分析を行うことができる。新型コロナウイルス肺炎の診断機能を大幅に強化し、臨床医及び画像診断医の負担を大幅に軽減する見込みだ。また患者は早期診断と迅速な治療を受けることができ、患者の予後の改善と死亡率低下の目的を達成する。

出典:人民網日本語版

つまり、武漢で大量発生している新型肺炎患者の胸部CT画像をビッグデータとしてAIに学習させ、画像が類似している患者を新型ウィルス感染者と判定するということのようだ。

人手と時間を要するPCR検査では大量に待機する感染の疑いがある人をさばききれず、まだ実験段階のAI技術を実戦で使用開始したのかもしれない。もちろん誤差はあるだろうが、判定を待つ間に死んでいく患者を少しでも救える可能性があるのも事実だ。日本にこうした決断ができるだろうか?

さらに、日本で感染者の発見が遅れた原因となっているPCR検査のキャパシティー問題についても、中国との格差が気になる。

新華社が配信した「24時間態勢でウイルス検査 武漢の核酸検査実験室」という記事から引用する。

中国湖北省にある新型コロナウイルスの核酸検査機関の一つ「武漢金域医学公司核酸検測(検査)実験室」では、スタッフが1日3交替勤務でPCR検測機器18台を24時間稼働させ、同省内の武漢市、荊門(けいもん)市、荊州市、孝感市、天門市、黄岡市などから採集したサンプル2千余りの検査を毎日行っている。

出典:新華社

1日3交替で18台の機材を24時間稼働させて検査を行う。おそらく検査機関はここだけではないだろう。感染者を割り出すには、その数倍の陰性の人の検体も検査しているはずだ。

本当のアウトブレイクが起きれば、これほどの検査体制が必要で、それでも検査が間に合わず、先に引用したようなAIを使った画像判定を導入するようになったのだろう。

中国では全国から数千人単位の医療スタッフが湖北省に送り込まれている。すでに医療関係者の1716人が新型ウィルスに感染し6人が死亡したという耳を疑うような報道もあった。未知のウィルスとの戦いは、文字通り国中の人材や機材、英知を総動員しての総力戦である。

今の日本に、その覚悟ができているのか、甚だ心もとない。

中国からの報道の中には、こんな記事もあった。

「火神山医院、24時間営業の非接触型スーパーがオープン」という記事には、例の突貫工事で完成した専門病院のその後が紹介されていた。

店員がおらず、購入後にコードスキャンで退店でき、レジはレシートを出さない。これは武漢火神山医院の「非接触型スーパー」の購入シーンだ。スーパーのオープン初日、200人以上の利用客が訪れていた。この急遽オープンしたハイテクなスーパーは、病院の最前線で戦う人々に最も安全で便利な生活サポートを提供している。人民日報海外版が伝えた。

火神山医院は肺炎重症患者集中エリアで、「非接触」は最大限の安全をもたらす。肺炎の感染の特徴により、他人との濃厚接触を回避すれば、感染確率を大幅に下げることができる。スーパーに店員がいなければ、人と人との交流を減らすことができる。コードスキャンの決済により接触を減らし、効率を高め、ウイルスにつけ入る隙を与えない。また火神山医院は「戦場」であると同時に、多くの医療従事者の生活エリアでもある。食品や消毒用品などの生活物資の確かな需要が存在する。この大きな問題を解消するため、非接触型スーパーが誕生した。

出典:人民網日本語版

確かに医療関係者も生活しなければならない。

いつ届くかわからない救援物資を待つのではなく、病院にスーパーを作ってしまうという発想もなかなか日本人にはないだろう。しかも、中国らしい無人スーパーであり、さりげなく中国のハイテクを自慢する場ともなっている。

日本のテレビニュースでも話題となった客の2m以内に近づかない宅配業者の行動も感染を広めないという意味では、少しは効果があるだろう。

人通りのない北京や上海の映像を見るにつけ、東京や大阪に自宅待機の指示が出された時、どれだけの人がその指示を守るだろうかと日本のことが心配になった。

もちろん、中国のように人権のない社会になることを望まないが、感染予防という観点から見ると、中国を笑う前に、中国から学ぶべきことは少なくないと感じる。

東京の街から人が消える日が来ないことを望みたい。

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