<吉祥寺残日録>マスクの仲介業者現る #200430

今日で4月も終わり。

日本では、連休明けも緊急事態宣言を延長することになりそうだ。

でも、市場の雰囲気は妙に明るい。

アメリカの1−3月期のGDP速報値が−4.8%と悪い数字が連日報道される中で、欧米の株価は上昇を続け、日経平均株価も2ヶ月ぶりに2万円台を回復した。

昨夜株価上昇のきっかけとなったのは、アメリカの製薬会社ギリアドが、「抗ウィルス薬レムデシビルが臨床試験によってコロナ治療で主要目標を達成した」と発表したこと。有力なコロナ治療薬が見つかったのは良いニュースだが、問題はこのニュースが発表されたタイミングだ。

ギリアドのニュースが流れたのは、GDP速報値が発表される時刻の直前だったのだ。レムデジビルはトランプ大統領がことあるごとに言及している薬であり、製薬会社の発表は、悪い経済指標で株価が反応するのを防ごうという政治的な狙いがあったのではないかと私は推測する。

コロナショックが起きてから、私は株式の先物相場の動きをずっと見ているのだが、要所要所で政治的な動きを感じる。もちろん株価を支えることはどの国の政権にとっても重要だから当然と言えば当然なのだが、トランプ政権にしても、安倍政権にしても、好調な株価が政権の重要なベースになっているため、必要以上に市場に介入し、市場が実体経済を反映しなくなっているのではないかと危惧しているのだ。

営業休止に追い込まれて苦しんでいる多くの業界を尻目に、「強欲資本主義」だけが政府と一体になって生き残るとすれば、一体どんな社会がコロナ後に待ち構えているのだろう?

どうせなら、コロナショックでウォール街にも鉄槌が下ってほしいと私は密かに願っている。

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国会では「大恐慌」とか、「第3次世界大戦」とか、仰々しい言葉が乱れ飛んでいるわりに、ちっとも切迫感を感じられない。

「アベノマスク」の予算を困窮している人たちへの救済に使うべきだとする野党の追及に対しても、安倍総理はいつものようにはぐらかすだけ・・・。

私たちの心に響くような言葉は一向に聞かれない。

残念なことだ。

そんな中、吉祥寺の街でも、このところマスクを見かけるようになった。

ドラッグストアや薬局には相変わらず在庫が一切ないのに、路上やマスクとは関係なさそうな店舗でマスクを売っているのだ。

50枚入りで価格は3500円から4000円。

コロナ前には600円ぐらいで買えたので、ずいぶん高いが、どうしてもマスクが欲しい人には買えない金額ではない。

でも、どうしてこんな現象が起きるのだろう?と思っていたら、朝日新聞にこんな記事が出ていた。

『金券ショップにマスク山積み 突然現れた「仲介業者」』

私同様、不思議に思った記者さんが取材したのだろう。その記事を引用させていただく。

 マスクは、どこからきたのか。金券ショップのオーナーの男性に聞くと、4月に入って突然、「卸売業者」を名乗る男性が売り込みにきたという。

出典:朝日新聞

「卸売業者」とは何か?

 「中国製のマスクを1枚60~70円で買わないか」

 その後も1日に2、3人の業者がマスクを売り込んできた。価格は1枚70円前後が多いが、150円を提示した業者もいるという。

 オーナーは、実際は知り合いの業者から中国製を5千枚単位で仕入れた。1枚あたり10円ほど上乗せして販売。1日200箱近く売れた日もあるという。

 ほかに都内で「マスクを売っている」と話題になるのが、輸入雑貨店などが集まる新大久保だ。4月下旬に大久保通りを歩くと、韓国コスメショップやレストラン、雑貨店の店頭で、マスクが山積みだった。

 駅近くのアジア食材の販売店にも、突然つき合いのなかった業者から「中国から輸入したマスクを売らないか」と売り込みがあったという。1箱50枚入りのマスクを購入し、3200円で売っていた。

 各地でその存在を聞かされたのが、国内の店舗と、マスクを生産、販売する中国系企業をつなぐ「仲介役」の業者だ。

 取材に応じた神奈川県在住の40代男性もその一人。男性によると、本業はフリーの企業コンサルタント。その関係で貿易会社や中国系企業と付き合いが多く、もともとは1月末ごろ、感染者が急増していた中国に日本製のマスクを売らないかと打診があったという。

 だが逆に日本国内のマスク不足が深刻になった。知り合いの貿易会社から4月上旬、横浜港経由で入ってきたマスク計9万枚を購入。1枚60円で、数円を上乗せして知り合いの企業や美容室などに売っているという。「利益はほぼない」と話すが、周囲でも「中国とつながりのある貿易会社や、中国に親戚がいる商店が、本業の傍らでマスクを輸入している」と明かす。

 ただし中には、素材が極端に薄いマスクを持ち込んでくる業者もおり、事前にサンプル品を見て質を確認しているという。「たいていの業者が10円くらい上乗せして売っており、仲介者が増えると、それだけ値段が上がる」とも話す。

 中国の工場から直接仕入れている店もあった。東京・日本橋の婦人向け衣料品販売店は普段から、中国製の服を輸入。そのつてで、中国の工場で作られたマスクを4月に20万枚仕入れ、すでに同業の販売店などに売り切ったという。

 街には徐々にマスクが出回るようになっている。新大久保のレンタルスペースでかばん店を開いている男性(49)は、集客目的もあって5枚入りマスクを358円で販売してきたが、こうこぼした。「もう賞味期限が迫ってきたということでしょうね」

出典:朝日新聞

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中国では、外出する際のマスク着用義務が今日から緩和されるという。

感染が沈静化してきた中国や韓国・台湾では、大量生産したマスクが余り始めていて、普通にお店で買うことができるらしい。

これまでマスクをしなかった欧米でマスクの需要が急増しているので、世界全体ではまだまだマスクは品薄かもしれないが、徐々に落ち着きを取り戻している。

日本に普通のマスクが出回る日も遠くないかもしれない。

その代わり、値段は、コロナ前よりは確実に高くなるだろう。絶対的な需要が急増したのだから、これは仕方がない。

アベノマスクが全家庭に配布される頃には、ドラッグストアにもマスクが並んでいるかもしれない。

全国知事会のテレビ会議などを見ていると、知事さんたちは各々の地元特産の布を使ったマスクをつけていたりする。このマスクがなかなかいい。

日本政府が行うべきことは、粗悪なガーゼマスクを海外で作らせることではなく、医療や介護の現場で働く人のために高価でも必要なマスクを国内外で確保する一方で、国内各地の企業や資源を活用して個性豊かな布マスクの生産を資金的に後押しし、日本らしいセンスのいい、かわいいマスクを国民に広め、海外にも販売していくことではないかと思う。

安倍さん自ら「アベノマスク」を着用しても、サイズの小ささ、デザイン性のなさのために多くは使われずに無駄になるだろう。

たかがマスクだが、そこに日本政府のコロナ対応が象徴的に表れているのだ。

<追記>

5月1日の朝日新聞に中国人バイヤーのインタビュー記事が掲載された。

マスク販売のカラクリがよくわかるので、引用させていただこうと思う。

 ――ドラッグストアやコンビニ、スーパーではマスクは品薄が続いています。その一方でタピオカドリンクの店など、まったく関係のないところで取り扱っているのはなぜですか?

 「簡単に言うと、在日中国人の間で(マスク販売が)はやっているんです。もともと他の商売をやっていた人もいるし、私のように以前から中国との間で輸入卸業をやっていた人もいます。例えば飲食業をやっていた人は、本業を休業しています。仕事はないが、時間はある状態です。3月末から4月初めごろに、『あいつはマスクの輸入を商売にして、うまくいっているらしい』といううわさが在日中国人の間で一気に広がりました。それでみんな始めたんです」

 ――どうやって仕入れているんですか?

 「人それぞれですが、私の場合、仕入れは中国にいる知り合いに頼んだり、最近は現地の工場と直接やりとりしたりしています。中国のSNS『微信(ウィーチャット)』でのやりとりが多いです」

 「既に報道されているとおり、中国ではいろんな企業がマスク生産に参入しました。沿岸部の企業が多いですが、内陸部にも広がっています。小規模の会社も合わせれば、全部で2万社という話もあります。生産量が急増したので、それだけ原料の不織布は奪い合いになっています。不織布の仕入れにお金が必要なこともあり、マスク取引は原則として前払いです」

 ――仕入れ値はどれぐらいですか?

 「不織布の値段は急騰しています。マスクの売り先はあるのに、不織布を仕入れられず稼働を止めている工場もあるくらいです。1枚あたりだと、仕入れ値がだいたい25~35円。それを輸入して、卸値が40~50円。なので小売価格が60~80円になるのも仕方ないんです。誰かが不当にもうけているわけではありません。工場によっては2千~3千枚の発注から対応してくれるところもありますが、だいたい万単位、10万単位で仕入れます」

 「今の問題は、輸送用の航空便の手配が難しいこと。順番待ちです。中国側の輸出時の品質チェックも厳しくなっています。発注から日本に到着するまで7日から10日かかります」

 ――売り先はどうやって開拓を?

 「もともと取引がある会社や病院、地方自治体に卸す場合が多いです。私はこの1カ月で500万枚ほど卸しました。既存の取引先を持たない人が飛び込みで繁華街の店に営業をかけることもあります。なので、タピオカ屋にマスクが並んでいるんです。こちらも在庫を抱えないよう真剣ですし、客の減った繁華街の店にとっても、貴重な収入源です」

 「先日、ある病院に4種類のマスクを持ち込みました。品質や値段はバラバラです。見た目がいちばん良いのは品質がいま一つな安いものだったんですが、対応してくれた医師と臨床検査技師の方は、見事に品質の高いものを見分け、購入しました。さすがプロだなと恐れ入りました」

 ――スーパーやドラッグストアに並ばないのはなぜでしょう?

 「いろんな理由があると思います。一つは品質、もう一つは値段です。初めて取引する相手だと、本当にちゃんとした品質か不安ですよね。なので、ブランド力のある大手の小売店はなかなか手を出しにくい。私も、輸入してみたらボロボロで売り物にならないものだった、という経験が複数回あります。『1箱50枚入りのはずなのに、数えたら48枚だった』という話も聞きました。クレームを入れても交渉に時間がかかるので、とりあえず気持ちを入れ替えて次の取引へいく、というのが現状です」

 「もう一つの理由は、値段が高いことでしょう。日本の、特に大手の小売店は、消費者からの『この非常時に、こんな値段でマスクを売るなんて!』という批判をおそれている面があると思います。最近は少しずつ大手の小売店でも見かけるようにもなってきましたが、まだおそるおそるだと思います。だからこそ、繁華街の異業種の店が販売に乗り出しました」

朝日新聞「「マスク500万枚売った」 中国人業者が明かした事情」より

数週間前には50枚4000円が相場だったが、今はシャープのマスクが一つの基準になっていて、3500円から3000円に徐々に値段が下がっているという。

物の価格は、需要と供給の関係で決まる。

中国人の逞しさだけが印象に残るインタビュー記事だった。

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