ボトルネックは検査するかどうか? 感染者数増加に神経を尖らす各国が大規模検査を行わない事情

感染の拡大が止まらない新型肺炎。最新の発表によると、中国での感染者数は2万438人と2万人を超え、死者数も425人に増えた。

日本では横浜に入港したクルーズ船に感染者が乗っていたことがわかり、乗客の下船を認めず海上での検疫が行われていて、メディアが大々的に報道している。

スタジオでのコメンテーターからは「どうして乗客全員の検査を行わないのか?」と政府の対応を批判する意見も出ているが、肝心のポイントについての取材が足りていない。

今、日本の検査能力はどの程度あるのか?

新しいウィルスである。インフルエンザのように簡単に感染の有無を判定できる簡易キットは世界中どこにも存在しない。専門機関に検体を送って一人一人培養してウィルスの有無を判定するしかないのだ。

当然、時間がかかる。人員などやりたくても能力的な限界がある。

疑わしい人をすべて調べることなど、現段階では所詮できないのだろう。

それは日本に限らない。中国でも新型ウィルスの検査を受けられないまま、公表数字に含まれていない感染者が相当数いると見られている。

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そうした検査態勢の問題のほかに、中国政府との関係という問題も各国政府を悩ませているのではないだろうか?

私が注目したのは、環球時報が掲載した社説だ。

タイトルは、「中国が困難に直面している時に追い打ちをかけるな」。中国からの渡航者の入国を禁止したアメリカを糾弾する内容でとても興味深いので、引用したい。

米国は過去14日以内に中国に渡航した全ての外国人の入国を2日から禁止した。これは、中国に対する渡航・貿易制限を提言しないとのWHOの主張から大きく逸脱するものだ。この極端な措置を他国に先駆けて講じた米国は、世界に良くない模範を示したと言える。

ウイルスとの闘いの前線にいる中国の医療要員に米国がこれまで何の支援もしていない一方で、パキスタンのような途上国がマスクや防護服を緊急輸送したことに、我々は注意を払っている。ポンペオ米国務長官は1月30日、中国国民を率いて感染症を迎え撃っている最中の中国共産党を「現代の最大の脅威」と批判もした。コットン上院議員も今回の感染症について誇張された対中非難を繰り広げた。

初期段階における武漢市のウイルス対策のやり方について、中国国内にはいくつかの批判がある。これは中国社会内部の正常な議論だ。だが世界的にみると、全体的に言って、中国の国全体としての危機対応は力強いものだ。党と政府の指導の下、中国社会は迅速に動員され、一連の措置を迅速に推し進め、全社会が歩調を合わせ、全体として秩序ある感染症対策の状況を形成した。

世界保健機関(WHO)は中国の講じた各措置を高く評価した。これまで中国国外では一人しか死亡していない。今回の感染症を迎え撃つにあたって中国の払っている多大な努力と犠牲により尊重するよう米国に要求するだけの理由が我々にはある。

出典:人民網日本語版

新型肺炎への対応は新たな米中摩擦の種となっている。

そして世界中から評判の悪いWHOのテドロス事務局長は改めて、「渡航や貿易を不用意に妨げる必要はどこにもない」と述べ、中国から渡航を禁止する国が相次いでいることに懸念を示した。

中国はWHOを人質にとって、世界各国に露骨なプレッシャーをかけている。

事態が収束した時、各国が中国にどのような態度をとったかを材料にして報復を行うのだろう。

確かに中国自らの責任とはいえ、中国は今、未曾有の国難の中にある。震災の時、私たちが海外からの援助に深く感謝したように、中国の人たちも今助けてくれる国には強い好感を抱き、自分たちをウィルス扱いした国に対しては強い恨みを抱くだろう。

私たち日本人も、「もし自分たちが武漢の人たちの立場に置かれた時にどのように感じるか?」という想像力を持って、中国の人たちに対応することが重要だとは思う。しかし一方で、各国が中国からの渡航者を制限することは当然の対応であり、それに圧力を加えるような高圧的な姿勢は世界からの共感を失うだけだろう。

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そしてもう一つ、私が個人的に疑っていることがある。

日本政府を含めて各国の政府は、自国での感染者数を不用意に増やさないために検査する対象を絞り込んでいるのではないかという疑いだ。

現在、中国の次に新型肺炎の感染者数が多いのは、日本である。

日本の公表感染者数は20人、武漢から帰国した人たち全員に検査を行ったことによってその数が増えた。ところが、連日増え続けていた感染者数がここ数日増えていない。それは新たに検査していないからで、クルーズ船の乗客を検査すると、また感染者数は増えるかもしれない。

外国はどうか?

日本の次は感染者が多いのはタイで19人、続いてシンガポールが18人、韓国・香港がそれぞれ15人、オーストラリア・ドイツがそれぞれ12人、アメリカが11人と続く。

当初は、中国からの観光客を一番多く受け入れているタイの感染者数が日本を上回っていたが、このところタイの感染者数は増加が止まった。中国からの観光客が減っているせいかもしれないが、私は疑っている。

意図的に感染者を増やさない政策を取ろうとしているのではないか? 武漢に滞在していたタイ人の救出も行っていないと聞く。

私がそういう疑いを感じたのは、感染者数が増加した国には国際的な不利益が予想されるからだ。

もし日本が本気で検査を徹底的に行うと、感染者数は確実に増えるだろう。他の国が今のような対応だと、日本だけが突出し、中国に次ぐ危険国とみなされる危険性がある。日本人の渡航制限や日本便の規制といった各国が中国に対して設けている厳しい措置が日本に対しても行われる可能性もゼロではなくなるのだ。

それを感じ取って、各国が感染者数を増やさない方針に切り替えたのではないか?

つまり、疑わしい患者であっても、武漢や湖北省と関係ない人たちには検査を行わない。検査を行わなければ感染者数の急激な増加は避けられるからだ。

しかし、もし各国がそうした姿勢を取っているならば、その間にウィルスが世界中に拡散する危険性は高まるのだろう。

「あえて検査をしていないのではないか」というのは、もちろん単なる私の想像である。

これが単なる妄想であることを願っている。

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