地方消滅

増田寛也編著「地方消滅」を読んだ。

全国896の自治体を「消滅可能性都市」としておととし発表された「日本創成会議」の報告書は、大きな衝撃を持って受け止められた。増田氏はこの会議の座長を務めた。

日本の人口が減り始めていることはすでに広く知られている。その結末として、地方の人口が減っていることも知っている。地方のシャッター通り、限界集落というテーマは最近始まったニュースではない。

個人的には、日本の人口が減ること自体よりも、人口のバランスが悪いことの悪影響を強く意識している。日本の人口は明治以降急速に増えた。昔に戻るだけだとも言える。当然、人口が減る過程で経済的には痛みが伴うだろう。しかし、世界的に見て、日本の住宅事情は決して良くない。ここはむしろ、自然とともに生きてきた日本人の営みに少しずつ戻るべき時代なのだ、とも思う。

増田氏たちの主張を簡単に記しておくと、日本の人口減少の元凶は東京への一極集中だと考える。出産適齢期の女性が東京に集まることで、地方での出産が減る。東京は女性が出産する環境が厳しいため出生率は全国最低となる。そのため地方も都会も子どもが生まれず、地方から流入する人口も減ってきて東京でも人口減少が始まると予想する。

その対策として、限られた予算を地方の中核都市に集中投下し、若者が東京に出なくても仕事や満足が得られる都市を全国に整備することを提唱する。

確かに東京一極集中の「極点社会」は好ましくない。ドイツのような地方分権社会が成立すれば、今よりも暮らしやすくなるかもしれない。しかし一方で、東京のようなメガシティー以外にグローバル競争は勝てない気もする。

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この本、個人的にはさほど面白くなかったが、ひとつだけ興味深い話があった。

地方の収入の1/3が年金収入、1/3は公共事業、そしてそれ以外の収入は1/3しかないというのだ。年金生活者の比率が多い地方は老人たちの年金で支えられ、雇用も医療や介護分野に支えられているのだと言う。これでは若者たちが地方から逃げ出すのも無理はない。あまりに夢がないではないか。

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うちの親戚でも高齢化が急速に進んでいる。

最近、叔母がグループホームに入った。今月16日に81歳の誕生日を迎えたばかりだ。一人暮らしで、家では人形に話しかけていたという叔母は、ホームにうまく溶け込めたらしい。他の入居者たちと話すようになったことで、人形を手放すようになったと良い兆候が見られるという。

もう一人の伯母は、最近家の片付けを始めた。その過程で私の幼稚園時代の写真が出てきたそうだ。何事も自分でやる伯母らしい。きょう、その伯母からミカンとカキが届いた。伯母はまもなく85歳になる。本当に働き者だ。

一方で、個人的には若者の雇用が心配だ。

定年延長で、高齢者が若者の雇用機会を奪っているのではないか? 人数の多い高齢者のニーズに政治が引きずられているのではないか?

自分を含め、年寄り社員の身の引き方、第二の人生の過ごし方、社会への貢献の仕方こそ、今後ますます重要になってくると思うのだが…。

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