<吉祥寺残日録>コロナ禍の新年!昨夜の紅白歌合戦に音楽の力とテレビマンの意地を感じた #210101

2021年、明けましておめでとうございます。

コロナ禍で迎える特別な年明け。

それでも初日の出は、いつもと変わらずきれいだった。

さて、大晦日に発表された新規感染者数には少しドキッとさせられた人も多かったのではないだろうか。

東京都で1337人。

初めての1000人越えとなり、全国でも4520人と一気にジャンプアップした感じである。

そのためか、初日の出を見るために、井の頭池に集まった人の数は例年より少し少ない気もする。

とはいえ、気にしない人はまったく気にしない。

これも紛れもない現実だろう。

我が家はといえば、息子たちとの集まりも中止して、妻と2人だけの静かなお正月を迎えた。

妻が作った簡単なおせちを食べ、岡山に住む親たちに電話でご挨拶。

福島で暮らす姪っ子が大晦日に赤ちゃんを出産したと言って、病院から電話をかけてきてくれた。

私の弟にとっては初孫で、私の母にとっては6人目の孫の誕生だ。

コロナ禍での出産ということでちょっと心配したが、予定より少し早いものの無事に生まれたということを聞き、まずはホッとした嬉しいニュースであった。

昼過ぎには、LINEをつないで長男家族と次男家族との初めてのマルチ通話を楽しんだ。

長男の家の小学生の女の子はママのスマホを使いこなして自分の顔をデコって遊んでいるし、次男の家の一番チビの男の子は果物や動物の名前が言えるようになったと絵本を見せながら教えてくれる。

やっぱり顔を見ながら話せると、もらえる情報量が断然違う。

新婚の三男夫婦も同じLINEのアカウントに入っているが、その時はまだ寝ていたのか後で遅れて連絡してきた。

そうして新しい年を迎えたわけだが、今日はどうしても昨夜の「紅白歌合戦」の話を書き残しておきたいと思う。

ステイホームが求められたこの年末年始、普段の年ならテレビをザッピングしたり、面白くなければ別のことをして過ごすのだが、今年は久しぶりに「紅白」をほぼ全部見てしまった。

正直、前半はさして面白くなく、他局の番組に見たいものがなかったので、NHKがついていただけだった。

しかし、後半に入ると番組に引き込まれて目が離せなくなった。

今ブレイク中のK-POP調の女性アイドルグループ「NiziU」から始まった後半。

しかし、曲が進むにつれ、曲の順番や一つ一つの演出など、これまでの紅白とは違う何かを感じるようになっていった。

「コロナ禍での紅白はどうあるべきか?」

そんなことを真剣に考え抜いたスタッフの姿が見える気がしたのだ。

まず、個人的に面白いと思ったのは、初出場となる「GReeeeN」の演出。

覆面で活動を続けているこのグループを果たしてどのように出演させるのか、今回一番興味がある部分だったが、スタッフが選んだ演出方法はアバターを使うことだった。

メンバー4人のアバターが歌に合わせてステージ上で歌う。

司会者たちと同じ画面に入ることもある。

事前収録ということも考えられるが、私はメンバーたちがリモート会場でリアルタイムで歌い、その動きをデジタル化してアバターを動かすある種の「AR技術」が使われていると感じた。

本当のところはわからないが、これは面白いと思った。

今年は東日本大震災から10年となる。

福島で活動している「GReeeeN」が、初めて紅白に出演した理由もそこにあるのだろう。

早くコロナが一段落して旅行ができるようになったら、ぜひ東北の被災地を訪れてみたい。

そんなことを思いながら、彼らの歌を聴いた。

次に注目したのは、この大晦日で活動を休止する「嵐」のメドレー。

米津玄師作詞作曲の「カイト」という最新曲を披露し、最後は定番の「Happiness」で締め括った。

このグループはいつ見ても、健全で明るい。

私にはそれがいささか退屈に感じていたが、その健全さこそが「嵐」の一貫した魅力であり、平成・令和という時代にマッチしたのだと思う。

「嵐」は紅白出演を含めて、大晦日の午後8時からジャニーズネットでオンラインによるラストライブを開催した。

配信チケットはファンクラブ会員が4800円。

500万人が視聴したとも言われ、1日で250億円を売り上げた計算だ。

東京ドームを何日も満員にしてきた国民的グループ「嵐」は、オンラインという新たな市場の可能性を音楽界に残して、この日グループとしての活動をひとまず終えた。

「嵐」の後を継ぐアイドルグループは誰になるのだろうか?

スタッフの強い思い入れを私が感じたのが、初出場の「YOASOBI」。

2020年にオンライン上で大ブレイクしたアーティストで、私もAmazonプライムミュージックで時々聴いていたのだが、紅白が彼らのテレビ初出演を実現したのはちょっと驚きだった。

今回の紅白は、密を避ける目的でいくつもの会場を使ってアーティストを分散させたのだが、「YOASOBI」が演奏したのは埼玉県にある「角川武蔵野ミュージアム」。

巨大な本棚に囲まれた博物館の中にモニターを配し、デジタルっぽい照明もすごく凝っていた。

演出・美術・技術のスタッフがNHKにしては珍しく格好いい空間を演出したと私は見ながら感嘆したのだ。

「X JAPAN」のYOSHIKIさんは、カリフォルニアの浜辺から「エンドレスレイン」を演奏した。

しかも、世界的なコロナパンデミックを象徴するように、すごいメンバーたちとのコラボを実現させたのだ。

ロックグループ「QUEEN」のブライアン・メイとロジャー・テイラー。

イギリスのソプラノ歌手、サラ・ブライトマン。

YOSHIKI自身、この1年カリフォルニアから身動きできなくなったというが、欧米のビッグアーティストの人脈を活かして、大晦日に世界的なコラボを実現させた。

コロナという世界が同時に直面している現実と、リモートの可能性を表した素晴らしい企画だったと思う。

12年ぶりに紅白に出場したミスチルの桜井さんもすごく印象的だった。

50歳になった桜井さんはさすがに少し年をとった顔で、「生きることを切実に感じながら歌います」とカメラ目線で語りかけ、コロナ禍で作った曲「Documentary film」を静かに歌った。

この辺りから、演出スタッフのメッセージがいよいよ明確に伝わってくるように感じる。

コロナによって活動を制約されたアーティストたち。

「不要不急」と言われコンサートも開けなくなり、生活に困窮したミュージシャンやイベント関係者たちもたくさんいた。

しかし、「人間にとって音楽は大切なもの」「みんなでつながりあい助け合ってこの難局を乗り切ろう」そんなメッセージが番組からビンビンと流れ出してくる、そんな感じを私は強く受けたのだ。

星野源さんの「うちで踊ろう」もよかった。

松田聖子さんの「瑠璃色の地球」も・・・

松任谷由実さんの「守ってあげたい」も・・・

そして玉置浩二さんの「田園」も素晴らしかった。

どの曲も聴くものに力を与えてくれる。

そして、2020年コロナ禍の紅白歌合戦でスタッフたちがトリに選んだのは、福山雅治とMISIAの2人だった。

今回で50回目の出演となる五木ひろしさんでもなく、この日で活動休止する嵐の5人でもなく、この2人を最後に持ってきた明確な意図がスタッフたちにあったのではないかと感じたのだ。

白組の最後を飾った福山雅治さんは、例年自身の年越ライブの会場から中継の形で出演してきたが、今回はNHKホールで歌った。

年越ライブは中止せざるを得なかったのだろう。

彼が歌ったのは名曲「家族になろうよ」だった。

いつか父さんみたいに大きな背中で
いつか母さんみたいに静かな優しさで
どんなことも乗り越えてゆける
家族になろうよ

その歌詞、その歌声がなんと2020年の最後にふさわしかったことか。

静かに心が癒されていくのを感じた。

そして・・・

大トリを務めたのはMISIAさんだった。

当初発表された時には、「なぜ?」と思ったが彼女が歌う「アイノカタチ」を聴きながら、スタッフが彼女を大トリに選んだ意味が少し理解できたような気がした。

あのね 大好きだよ
あなたが心の中で
広がってくたび
愛が  あふれ  涙こぼれるんだ

「あのね 大好きだよ」と歌いかけられるだけで、固まっている心がほぐれていく。

歌の力って本当にすごい。

そんなことを感じさせてくれる圧巻のフィナーレだった。

芸能界の力関係や様々なしがらみでがんじがらめになってきた年末のお化け番組「紅白歌合戦」が、2020年という特別な年にふさわしい素晴らしいエンターテインメントに仕上げられていた。

テレビに携わってきた人間として、テレビの力を誇らしく感じ、この番組を作り上げたスタッフに敬意を評したいと心から思った。

どこにも出かけられない、誰にも会えない、特別な年末年始。

でも、紅白のおかげで気持ちの切り替えができ、良い年越しが迎えられた。

ミュージシャンの皆さんが全力で音楽活動できる日が1日も早く来ることを願いながら、私も自分のペースで頑張って生きていきたいと気持ちを新たにしたお正月だった。

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