天然うなぎ

7月30日、岡山で迎えた土曜丑の日。妻は友人とのランチでうなぎを食べるというので、待ち合わせのお店まで車で送り届ける。

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畑の管理をお願いしている「宿(しゅく)の伯母ちゃん」の携帯電話が調子が悪いということで、ドコモショップに立ち寄る。

新しい携帯を買うと言っても2−3時間待ちだという。特段混んでいるわけでもなく、カウンターの客は1人、2人といった状況なのに整理券では10人ほど待っている表示になっている。特に何もしていなさそうなスタッフが何人もいるのに空いたカウンターに案内するわけでもなく、「2−3時間かかります。外出されても結構です」などと説得力のない説明をマニュアル的にされた。

仕方なく車を駐車場に止めたまま、母のマンションで時間をつぶすことにする。

そこで母から岡ビルの鰻屋の話が飛び出した。死んだ父がよく自転車で買いにいっていたと懐かしそうに話した。岡山では有名な老舗のようで、朝日新聞にも記事が載っていた。「じゃあ、後で買いにいこうか」というと母は迷わず同意した。

もう一つ、母から出た話題。先月の電話代が1万円を超えてしまったというのだ。

備前市に住む母の妹、「片上(かたかみ)の叔母ちゃん」の老化が進み、最近では薬の飲み方がわからなくなることもあるらしい。そのため、母が毎日のように電話をしているのだという。「携帯電話の料金プランをかけ放題に変更したら」と提案してみた。「ついでに使わないメールの契約も解除した方がいい」とアドバイスした。

これまでメールを外すことになぜか消極的だった母親。

今使っている携帯電話は、父が亡くなる前に私たち子供からプレゼントしたものだ。父は初めての携帯電話を喜んで、孫たちに早速メールを送ってきたりした。父が死んだ時、小さい字で書かれた携帯電話のマニュアルを一生懸命読みすぎたのが、くも膜下出血を起こした原因ではないかと家族で話したものだ。

だから母にとって、メールは父の思い出なのかもしれない。それ故、メール機能を外すのに抵抗したのではないか、と思っていた。

しかし、よほど1万円の通話料がこたえたのか、今回は素直にプラン変更の提案を受け入れた。

伯母の携帯を買い替えて、母の料金プランを変更し終わったのは最初に店に入って3時間半後だった。もう少し、何とかならないものだろうか。

そのまま、岡山駅の近くにある岡ビルへ。

遠い昔、学生時代にここに来たことがある。様々な商店が軒を連ねる雑居ビル。昭和の匂いプンプンの、時間が止まったような場所だ。

午後3時半というのに、ビルの中には客は一人もいない。寂れきっている。しかし、表に出てみると一軒の店の前にだけ行列ができていた。有限会社光吉商店。お目当ての鰻屋だ。この日の気温は35℃。炎天下を避けて日陰に行列がのびる。

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「天然」の二文字が目に入った。岡山産の天然うなぎがあるという。「岡山に天然うなぎがいるんだ」と驚いた。

しかし昔は、母が育った家の前の小川でもうなぎが獲れたと言った。そういえば子どもの頃、岡山県の東部を流れる吉井川に親戚の人たちに連れられて泳ぎにいった時、大人たちが手に竹の筒のようなものを持っていて、それを流れに沈めてうなぎを獲っていたようなかすかな記憶が蘇った。

岡山の天然うなぎ、蒲焼きにしたものを買った。1匹5500円。さすがに高い。

買って帰って、夜家で食べた。よく運動しているせいか、天然うなぎは養殖ものより歯ごたえがあった。店の前に飾ってあった写真を見ると、養殖うなぎは白、天然うなぎは黄色。色も全然違うのだ。

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私の知らない岡山が、ここにあった。

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