<吉祥寺残日録>巨樹百景/川棚のクスの森 #200627

家で過ごす時間が圧倒的に増えたため、気になる番組を片っ端から録画していると、録画機の容量がいっぱいになってしまった。

そんな理由で、今年のお正月に録画したままになっていた番組を観ることになった。

NHKのBSプレミアムで元日に放送された「巨樹百景 神様の木に会う」という地味な番組である。

大きな木を見ると、なぜか畏れ多い心持ちになるものだ。

今年の正月に訪れたニュージーランドでは、公園や街路樹の木がやたらと大きく育っているのを見てやはり厳かな気持ちになった。

東京では大きな樹木に感動するということはまずないが、番組では日本各地に残る樹齢2000年、3000年といった巨木を数多く紹介していた。

番組で紹介された巨樹のうち、私が一番印象的だったのは、山口県下関市にある「川棚のクスの森」と呼ばれる大きなクスノキだった。

樹齢は1000年以上と推定され、1922年に国の天然記念物にも指定された名木。

上空から見ると、とても一本の木とは思えないほどの葉っぱを茂らせていた。

枝張りは、東西に58メートル、南北53メートルもあって、そのためこのクスノキの巨木には「森」という呼び名がつけられたのだ。

ところが近年になって、パワースポットとして注目され周囲を公園として整備した後、巨木に異変が生じた。

2017年ごろ、突然一気に葉が落ち、枯れ始めたのだ。

1000年以上生き続けてきた大切な巨樹が、わずか1~2ヶ月の間に枯れたことに驚いた地元の人たちは、樹木医を入れて調査を行なった。

その結果、公園化する際の盛り土が影響して地中の酸素不足から根が腐ったことが原因だとわかった。

巨樹の大敵は、やはり人間だったのだ。

しかし、「川棚のクスの森」は死んではいなかった。

枯れた枝の胴の部分から次々と新しい芽がふいてきたのだ。

この現象は「胴吹き」と呼ばれ、樹木が危機に瀕した時、胴の部分にある「休眠芽」が目覚め、そこから新たな成長を始めるのだという。

樹木が持つしぶとい生命力に圧倒され、見ていてちょっと感動してしまった。

巨樹は神々しい。

日本各地どこでも太い幹の周りにしめ縄が巻かれ、近くに祠が立っている。中には、幹にできた空洞に髪を祀り、祈りの場にしている所もある。

大きな木は、昔から日本人の信仰の対象だった。

多彩な自然に恵まれた日本列島はいにしえより八百万の神々の国であり、あらゆるものに神が宿るという日本人の信仰はこの島の自然がもたらす独特の感覚なのだ。

私も歳をとった。

近頃、神道や仏教のことを身近に感じるようになり、もっと知りたいという欲求が芽生えている。

ウィズコロナの時代、日本各地の巨樹を巡る旅もいいかもしれない。

この番組を録画した時にはまだ会社を辞めると決めていなかったが、これも何か運命的なものを感じる。

来月からはたっぷり時間がある。

まずは岡山に行った時に少し足を伸ばして、下関まで「川棚のクスの森」に会いに行きたい。

そんなことを、真面目に考え始めている。

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