両陛下、吉祥寺へ

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きのう、「いい夫婦の日」の話を書く。

その前日、私が帰宅すると妻が「明日、天皇が井の頭公園に来るんだって」と言った。どうやらマンションに「緊急告知」が張り出されたという。公園に面したベランダで不審な行動をしないよう警察から要請があったのだろう。

井の頭公園の100周年にちなんだ訪問。井の頭公園の正式名称は「井の頭恩賜公園」、つまり皇室から払い下げられた公園なのだ。

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そして当日、我が家の周りはいつもと違う朝を迎えた。

向かいのマンションの屋上には警察官の姿が・・・。おそらくうちのマンションの屋上にも警察官が陣取っているのだろう。

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吉祥寺通りにも点々と警備の人が配置され、腕章を巻いた警察官が大勢巡回している。

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私は、30年前の報道カメラマン時代を思い出し、少し高揚感を覚える。

妻は一度も天皇を見たことがないという。まあ普通、なかなか天皇を見る機会はない。

「ベランダから見えるかなあ」というので、「公園に行って近くから見ればいいじゃない」というと「そんなことできるの?」と聞いて来た。一般の人はそんな風に感じるんだ、とちょっとその反応が面白かった。

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そんな会話をしているうちに、私も天皇皇后両陛下を見てみたくなった。

会社に行くのを少し遅らせて、妻と一緒に紅葉の井の頭公園に行った。すると、知り合いの皇室担当の女性と偶然出会った。彼女の情報では、両陛下は最初に井の頭自然文化園に行くのだという。

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文化園の入り口に行くと、すでに10人ほどの待っていた。それを取り巻くように私服の警察官たちが大勢いる。優しい口調で「お迎えの方はこの青いロープの内側に並んでください」ととてもソフトな雰囲気。これも両陛下の一貫した姿勢の表れだ。

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10時35分、通行がストップされた。間も無く到着だ。

本当に昔、報道カメラマン時代に戻ったようだ。カメラをONにして到着を待つ。天皇の姿を見るのはいつ以来だろう。

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交通規制から1分後、両陛下を乗せた車が文化園に到着した。一般人にかかる迷惑を最低限にしたいという意図が伝わる無駄のない警備だ。

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窓を開けて、美智子さまが笑顔で手を振る。奥には天皇の姿も見えた。

待ち受けたおばさまがたも一斉に手を振る。みんなうれしそうだ。

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私が最初に見た天皇は、昭和天皇だった。報道カメラマンとして取材した式典で舞台の中央に座った天皇は、首相がお辞儀をしてもそちらを見ることもしなかった。それほど昔の天皇は権威的だったのだ。

その天皇のスタイルを大きく変えたのが、今の天皇皇后両陛下だ。

若い頃、私は天皇制反対論者だった。しかし、今の天皇の振る舞い、特に平和に対するぶれることのない真摯な姿勢を見るうちにその考えが変わった。太平洋戦争で命を落とした兵士たちの慰霊のためかつての激戦地を自ら回っている。その際、日本軍が現地の人々に与えた「加害」にもちゃんと配慮を示した。靖国神社に固執する人々よりもはるかにバランスのとれた見習うべき姿勢だ。すべての日本人が、こうであれば私は胸を張って日本人であることを誇りに思うことができる。

両陛下は、井の頭自然文化園でツシマヤマネコをご覧になったり、長崎平和祈念像を作った西村西望の作品が展示されている彫刻館を訪問されたりしたらしい。

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その間に私たちは井の頭公園に移動した。両陛下は文化園の後、公園内を散策されると聞いたからだ。

公園内はまだ普段通り自由に歩くことができたが、大勢の警備陣が各所に配置されている。そんな公園の一角に人が集まっているのが見えた。先ほどの文化園前よりずっとその数は多い。

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ベンチには使用を控えるよう張り紙が貼られていた。

せっかくなので、私たちもここで待つことにする。

30分ほど待った。待つことこそ、報道カメラマンの仕事だった。いいカメラ位置を確保して取材相手の到着を待つ。チャンスは一瞬だ。撮り逃しの許されない緊張する仕事。会社に入ったばかりだった私は、いつも失敗するのではないかと怯えながら待っていた。

そんな昔の記憶が蘇る。

そして11時20分、両陛下が歩いて私たちの前に姿を現した。

にこやかな笑顔で集まった人たちに話しかける。いつもながらフレンドリーな対応。両陛下は何十年もこうして国民に接してきた。

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戦後の憲法に定められた「国民統合の象徴」という難しい役割を形にしようと努力されてきた結果が、このスタイルなのだ。見事である。私同様、天皇批判の声が時とともに消えて行ったのはひとえにこうした両陛下の姿勢が批判できない理想的なものであったことに他ならない。

これからの天皇がこのスタイルを守ることができるのか。それは日本の命運に大きく関わる問題だ。日本の歴史を眺めてみると、常に権力欲にかられた者が天皇を利用して権力を握った。天皇は頻繁に政治に利用された。今の天皇は一貫して自らのスタイルを貫き、政治に利用されることがなかった。その一点だけでも、私たちは良い天皇の時代を生きたと感じる。

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ちょうどニュースでは、天皇の生前退位が再来年の4月末にほぼ決まったと伝えている。心から「ご苦労様でした」とお伝えしたい。

皇太子と雅子さまにも、ぜひ自信を持って頑張っていただきたい。皇室で生きることの大変さは想像を絶する。とても週刊誌のように雅子さまを批判する気にはなれない。自分のスタイルを確立していただければそれでいい。

ただ、今の天皇が築いた「象徴」としての基本姿勢はぜひ引き継いでいただきたいと願うばかりだ。

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11月22日、「いい夫婦の日」。

妻と二人で、いい夫婦を見させていただいた。

 

 

 

 

 

 

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