<きちたび>モスクワにて社会主義とテレビのワイドショーについて考えた

心配したeDreams手配のアエロフロート便は特段の問題もなく乗ることができた。

成田からとんぼ返りという最悪の事態は避けられたわけだ。


およそ10時間のフライトの末、経由地のモスクワ・シェレメチェボ空港に到着した。

ここで4時間ほど待ち時間があるため、初めてスマホからの投稿を試みることにした。

ここシェレメチェボ空港は昔何度か降り立ったことがある。

1990年ごろ、まさにソビエト連邦が崩壊する時期に取材に訪れたのだ。

冬のシェレメチェボ空港は滑走路が文字通り凍りつき、極寒の地というイメージそのままだった。

しかも空港は暗く不必要に重々しく、冷戦時代のビリビリした緊迫感が空気を一層重苦しいものにしていた。

あれから25年以上の月日が流れ、着陸時には当たり前のように空港へのアプローチの様子が機内のモニターに映し出されていた。

冷戦時代、社会主義国で空撮を取ることはかなり覚悟がいる仕事だった。空からの撮影は禁止されており、特に空港は一級の機密事項に属し撮影がバレると厳しい処分が待っていた。

だから必要な場合には慎重に隠し撮りをして、撮影したテープは素早くカメラから取り出して別の場所に隠したものだ。

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空港の建物もガラス張りの近代的なものに変わっていて、夏の日差しが搭乗ロビーを明るく照らし出していた。

免税店やオシャレなカフェが並んだ出発ロビーには、かなりセクシーなランジェリーショップも店を構えていた。

看板のキリル文字がなければロシアであることを忘れてしまいそうだ。

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トランジット客はパスポートチェックと手荷物検査を受けてから、乗り換え便が出発する別のターミナルへ徒歩で移動する。


案内板はロシア語と英語、そして中国語で書かれていた。

乗り継ぎ時間の間、やはりここでも賑やかな中国語を聞き続けることになった。中国人観光客は静かに待つことをしない。大人たちは大声で話をし、子供たちはロビーを走り回る。

すごい存在感だ。

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成田、モスクワ間のアエロフロート機内では2本の映画を見た。英語版の「ラ・ラ・ランド」と中井貴一主演の「グッドモーニングショー」だ。

テレビ局を舞台に、朝のワイドショーの現場を巧みにドラマ化した作品だ。

生の情報番組はテレビのタイムテーブルの中で一番大きな面積をカバーしている。しかし、ドラマやバラエティ番組を担当する制作局やニュースを担当する報道局、スポーツ番組を作るスポーツ局に比べ、何となく社内の立場が弱い。

昼夜逆転した過酷な勤務の中、安い制作費で番組を作るワイドショーの現場には、独特のノウハウが蓄積されている。生番組のプロフェッショナルたち。あらゆる世の中の関心事に精通し、生放送という最もテレビ的な能力を有した集団だ。

そのなテレビ局内の被差別集団の力と意地と悲しみを、この映画はうまく描いていた。

私は、生番組のプロデューサーも現場にストップをかける管理職も、高飛車な報道局の役も実際に経験してきた。だからそれぞれの役の気持ちがよくわかり身につまされた。

こうして引きで見ると本当に馬鹿な仕事だ。視聴率やスポンサーを気にしながらも、心の底には常に志を持って「くだらない」番組を作っている。考えてみれば、変な仕事である。

でも私はこの変な世界で生きてきた。

私から言わせてもらえば、愛すべき仕事であり、愛すべき仲間たちがそこにはいた。

世の中の人が考えているよりずっと真摯にテレビに向き合っている馬鹿な連中の集団だ。

私はこの世界で仕事ができたことを誇りにしている。

そんな事をモスクワで考えている。

 

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