京都出張の目的は、「京都知新」というイベントを見ることだった。
会場は「祇園甲部歌舞練場」内にある「八坂倶楽部」と書いてあった。私は京都に疎い。祇園甲部歌舞練場の名前も知らなかった。もちろん行ったこともない。
祇園甲部歌舞練場は、祇園花街のど真ん中にそびえていた。和洋折衷の建物群。入口に並ぶ赤い提灯。ここは祇園芸妓たちによる年一度の「都をどり」の専用劇場として1873年に開設された。
歌舞練場の正面は満開の桜に飾られている。右手の建物がイベント会場の八坂倶楽部だ。
赤い提灯としだれ桜。花街らしい趣だ。
このイベントは、大阪MBSで放送されている「京都知新」という番組に登場した芸術家や職人の作品を集めた展示会だ。
プロジェクションマッピングや・・・
提灯のアート。
金屏風を印刷で再現する技術やら・・・
4Kモニターを組み込んだ掛け軸など、伝統文化とテクノロジーの融合が表現されていた。
ただ、そうした展示より私の心に響いたのが、お庭だった。
窓枠で切り取られた美しい絵画のようだ。絵の中心にさりげなく桜が配されている。
身を乗り出すと、満開の桜。
やはり自然にはかなわない、ということは思わない。このお庭も人の手が作り出したものだ。ただ、このリアルなときめきを映像で置き換えるのは、やはり難しい。
庭に出てみた。外人さんが2人、床几台の上であぐらをかきのんびりしている。外国人観光客もこうした時間を過ごしてくれると間違いなく日本を好きになってくれるだろう。
庭から眺める八坂倶楽部と歌舞練場。
底を藻で覆われた池を錦鯉が悠然と泳ぐ。
歴史ある建物を鮮やかな桜が彩る。
私は、むしろ新緑が好きだ。とにかくこの季節は最高だ。
庭から戻ると、踊りの実演が始まった。2人の芸妓さんが3曲舞った。
祇園の街を少し歩く。
お茶屋さんが軒を連ねる美しい街並み。
さりげなく置かれている花にもセンスが光る。
都をどりの提灯。
お揃いのすだれ。
細い石畳の路地。
エルメスのお店もあった。何に使うのだろう。
今では多くの観光客で賑わう祇園の街の歴史を、ちょうどNHKの「ブラタモリ」でやっていた。
祇園の花街は元は四条通り沿いにあったという。しかし、四条通りを市電が走ることになり、通り沿いでの営業が禁止された。その救済策として、四条通りの南側の今のエリアに花街だできた。
この土地はもともと建仁寺の境内だった。ところが明治時代の廃仏毀釈により境内の北側半分が政府に没収されたのだ。その土地が祇園の組合に払い下げられて現在の形になったという。
ちなみに、市電開通で四条通りが拡張された際、八坂神社の門も通りの中心に合わせるべく、数メートル移動したのだそうだ。こうした努力で京都の美は作られているのだ。